監修者

児嶋雅幸

株式会社アリオン 代表取締役

児嶋 雅幸(本名:児嶋 正敬)

住宅ローン返済や任意売却の分野に20年以上携わる。2010年に株式会社アリオンを創業し、京都を拠点に、住宅ローンの返済に悩む方や不動産の売却を検討する方の相談に対応。宅地建物取引士、モーゲージプランナー(MP・CMP)、2級FP技能士(AFP)を保有し、京都を拠点に一人ひとりの状況に寄り添った生活再建をサポートしている。

任意売却を始めたものの、「問い合わせが少ない」「内覧はあるのに申込みにつながらない」と不安を感じている方はもいるでしょう。

買い手がつかない原因は、物件そのものだけとは限りません。価格設定や販売方法、内覧対応、不動産会社の経験、債権者との調整など、複数の要因が関係していることもあります。

この記事では、任意売却で買い手がつかない理由と改善策に加え、不動産会社を変更する際の注意点や、仲介以外の売却方法についても解説します。

1. 任意売却で買い手がつかないときは、まず「残された時間」を確認する

任意売却で買い手がつかないときは、価格や販売方法を見直す前に、まず「あとどの程度の時間が残されているのか」を確認しましょう。

競売手続きが進んでいる場合、買い手を探している間にも期限は近づいています。現在の進行状況と、任意売却を成立させるまでに必要な期間の両方を把握しておくことが、最初の一歩です。

(1)現在、競売がどこまで進んでいるか確認する

まずは、裁判所から届いている「競売開始決定通知」や期間入札に関する通知を確認します。これらの書類を見れば、競売手続きが現在どの段階まで進んでいるのかが分かります。

内容が分かりにくいときは、そのままにせず不動産会社などに確認してください。手続きの進行状況を正確に把握することが、任意売却の対策を考える出発点になります。

競売の流れやスケジュールについては、こちらの記事で詳しく解説しています。

競売とは?流れや期間・回避策などの知っておくべきポイントを解説

(2)開札期日が決まっている場合は特に急ぐ

すでに開札期日が決まっている場合、任意売却を成立させるまでに使える時間はかなり限られています。買い手が見つかっても、そこで終わりではありません。購入条件の調整、債権者との調整、売買契約、決済、競売の取下げと、いくつもの手続きを終えて初めて完了します。

特に注意したいのが、開札後に競売を取り下げる場合です。開札によって「最高価買受申出人(最も高い金額で入札した人)」が決まった後は、申立債権者が一方的に競売を取り下げることはできません。原則として、最高価買受申出人などの同意が必要になります。

そのため、確実に競売を取り下げたい場合は、最高価買受申出人が決まる前、つまり開札期日の前日までに、申立債権者から執行裁判所へ取下書を提出してもらう必要があります。

買主探しだけでなく、債権者との調整や決済、競売申立ての取下げまでに必要な期間を逆算して動くことが重要です。

2. 任意売却で買い手がつかないときに考えられる主な原因

任意売却で買い手がつかない背景には、物件の条件だけでなく、価格や販売活動、不動産会社の対応、債権者との調整など、さまざまな要因が関わっています。ここでは、考えられる原因を観点別に見ていきましょう。

(1)物件・条件の問題

まずは、物件そのものや内覧時の見え方に原因がないか確認します。物件の条件には変えにくいものもありますが、見せ方など工夫できる部分もあります。

#1:物件の状態や内覧対応に問題がある

購入希望者は、実際に室内を見たときの印象も踏まえて購入を判断します。荷物が多い、清掃が不十分、においや暗さが気になるなど、室内の印象によって購入を見送られることもあります。

内覧できる日時が限られていると、そもそも見てもらう機会自体を逃してしまうこともあります。大規模なリフォームに踏み切る前に、整理整頓や清掃、換気など、費用をかけずに改善できる部分から見直すのが基本です。

#2:立地・築年数・売却時期などから需要が少ない

駅から遠い、築年数が古い、周辺に類似物件が多いなどの理由で、購入希望者そのものが限られてしまう場合もあります。

通常の売却であれば時期を待つという選択肢もありますが、競売が迫る任意売却ではそれも難しいケースが少なくありません。変えられない条件については、価格や販売方法でどこまで補えるかを検討する必要があります。

(2)売り方・販売活動の問題

物件自体に大きな問題がなくても、価格設定や広告の出し方が合っていなければ反響は得にくくなります。売り方の面では、次の2点を確認しましょう。

#1:売り出し価格が相場より高い

購入希望者は、周辺の中古物件と比較しながら購入を判断します。相場より価格が高ければ、それだけで問い合わせにつながりにくくなります。

住宅ローンの残高が多くても、市場で実際に売れる価格とは切り離して考える必要があります。ただし任意売却では、売主だけの判断で自由に値下げできるとは限りません。価格変更を検討する際は、不動産会社を通じて債権者と調整します。

#2:広告・販売活動が十分に行われていない

売り出し価格が相場に合っていても、広告の露出が少なかったり、物件の魅力が写真や説明文から十分に伝わっていなかったりすると、問い合わせにはつながりません。

どのポータルサイトに掲載されているか、写真や間取り図、物件説明が十分かを確認しましょう。

(3)任意売却の進め方や依頼先に問題がある

任意売却では、通常の仲介に加えて債権者との調整も必要です。そのため、依頼先の経験や債権者との調整状況が売却の進み方に影響することがあります。

#1:不動産会社が任意売却に慣れていない

一般的な売却実績が豊富な会社であっても、任意売却を円滑に進められるとは限りません。金融機関や保証会社との調整、価格変更、競売までのスケジュール管理が、思うように進まないことがあります。

通常の仲介とは求められる対応が異なるため、任意売却そのものの経験を確認することが大切です。

#2:債権者との価格・売却条件の調整が進んでいない

購入希望者が見つかっても、それだけでは任意売却は成立しません。債権者との調整がまとまらなければ、話は先に進まないからです。たとえば、購入希望額では抵当権抹消への同意が得られない、というケースがこれにあたります。

申込みがあるのに契約へ進まない場合は、債権者との調整状況を確認する必要があります。

3. 【状況別】買い手を見つけるために今すぐ見直したい4つのポイント

前章で挙げた原因のうち、自分の物件に何が当てはまるかは、販売活動のどの段階で止まっているかを見ると判断しやすくなります。ここでは、「問い合わせ→内覧→購入申込み→契約」の流れに沿って、確認すべきポイントを整理します。

  • 問い合わせ自体が少ない場合|価格と露出を確認する
  • 問い合わせはあるが内覧が少ない場合|掲載内容と条件を確認する
  • 内覧はあるが申込みがない場合|価格・物件状態を確認する
  • 申込み後に進まない場合|債権者との調整状況を確認する

(1)問い合わせ自体が少ない場合|価格と露出を確認する

問い合わせが少ない場合は、まず価格と広告の露出をチェックします。

同じ地域や広さ、築年数の物件と価格を比較し、ポータルサイトへの掲載状況や写真、間取り図も見比べてみましょう。

担当者には、掲載媒体やこれまでの問い合わせ状況、価格に対する購入希望者の反応を聞きます。問い合わせ数は地域や価格帯によって異なるため、「○件以下なら少ない」と一律に判断するのではなく、反響の中身を見ることが重要です。

専任媒介契約や専属専任媒介契約では、レインズへの登録や売主への業務報告も義務づけられています。担当者に掲載媒体や反響状況を確認し、販売活動が十分かどうかも見直しておきたいところです。

(2)問い合わせはあるが内覧が少ない場合|掲載内容と条件を確認する

問い合わせ後に内覧へ進まない場合、詳しい条件を知った段階で候補から外されているケースが考えられます。

管理費・修繕積立金、引渡し時期、設備の状態などにネックがないか、内覧できる日時が限られていないかも見直してみましょう。

担当者に、問い合わせをした人がなぜ内覧に進まなかったのかを確認すると、改善点が見えてきます。

(3)内覧はあるが申込みがない場合|価格・物件状態を確認する

内覧まで進んでいるのに申込みがない場合は、実際に物件を見た後で見送っている理由があるはずです。不動産会社に、価格や室内の状態についてどのような反応があったのかを聞いてみましょう。

指摘が価格に集中しているのか、それとも室内の状態や設備に集中しているのか。それを整理できれば、優先して見直すべき点が見えてきます。

(4)申込み後に進まない場合|債権者との調整状況を確認する

申込みがあるのに契約へ進まない場合は、債権者との条件調整で止まっている可能性があります。

「現在何を調整しているのか」「購入希望額で抵当権抹消の同意を得られる見込みがあるのか」「契約までに残っている手続きは何か」。この3つを担当者に聞けば、どこで止まっているのかが見えやすくなります。

4. 不動産会社の変更は可能?任意売却に強い会社の見分け方

価格や販売方法を見直しても売却活動が進まない場合は、不動産会社そのものを見直すことも選択肢のひとつです。ここでは、途中で会社を変更する際の注意点と、任意売却に強い会社を見分けるポイントを解説します。

(1)任意売却の途中でも不動産会社の変更は検討できる

任意売却の途中でも、不動産会社の変更を検討すること自体は可能です。ただし、まず媒介契約の内容を確認しておきましょう。専任媒介契約や専属専任媒介契約では、契約期間中にほかの会社へ重ねて媒介を依頼することはできません。これらの契約の有効期間も、宅地建物取引業法上3か月を超えることができないと定められています。

不動産会社の責任によらない理由で媒介契約を途中解除した場合などには、それまでの媒介業務に要した費用を請求されることがあります。国土交通省の標準専任媒介契約約款でも、一定の条件では、それまでにかかった媒介業務の費用を請求できるとされています。

そのため、会社を変更する前に、現在の媒介契約に解除条件や費用負担の記載がないか確認しておきましょう。

また、現在の会社がすでに債権者と交渉を進めている場合、変更によって引継ぎに時間を要する可能性もあります。残された時間と交渉状況を踏まえたうえで判断しましょう。

(2)任意売却に強い不動産会社を見分けるポイント

任意売却では、査定額の高さだけで会社を選ばないことが大切です。任意売却の実績、債権者との調整経験、価格設定の根拠、競売までを見据えたスケジュールを説明できるかを確認しましょう。

問い合わせや内覧の状況を踏まえて、「なぜ売れていないのか」「次に何を改善するのか」を具体的に説明できるかどうかも、判断材料になります。別会社に相談する場合も、いきなり媒介契約を変更する必要はありません。まずは現在の販売状況についてセカンドオピニオンを求める、という方法もあります。

任意売却はどこに相談すべき?失敗しない相談先の選び方と初回準備

(3)「もう少し様子を見ましょう」だけで具体策がない場合は注意する

「もう少し様子を見ましょう」と言われるだけで具体的な改善策が示されない場合は、別の不動産会社への相談も検討しましょう。競売までの時間が限られている任意売却では、根拠のないまま様子見を続けることは避けるべきだからです。

もっとも、一定期間待つこと自体が問題なわけではありません。「なぜ待つのか」「いつまで待つのか」「その間にどのような販売活動を行うのか」「売れなければ次に何をするのか」を担当者に確認してみましょう。十分な説明が得られない場合は、契約をすぐ解除するのではなく、別会社からセカンドオピニオンを受けることを検討してください。

5. 任意売却で最後まで買い手がつかなかったらどうなる?

期限までに任意売却が成立しなければ、競売によって不動産が売却される可能性があります。競売では、開札後に売却許可決定が行われ、買受人が代金を納付すると所有権が移ります。

競売で売却されたからといって、住宅ローンなどの残債が当然になくなるわけではありません。売却代金を返済に充てても残額があれば、その後も返済を続ける必要があります。返済が難しい場合には、状況に応じて個人再生や自己破産などの債務整理を検討することもあります。

また、買受人へ所有権が移った後は、原則として自宅を明け渡さなければなりません。任意に退去しない場合には、引渡命令や強制執行に至る可能性もあります。競売開始決定が出た時点ですぐに退去するわけではありませんが、対応を先延ばしにしないことが重要です。

6. 仲介で買い手が見つからない場合に検討できる3つの方法

仲介で買い手が見つからない場合は、残された時間や債権者の意向を踏まえ、別の売却方法も検討します。代表的な選択肢は、買取・親族間売買・リースバックの3つです。

(1)早期売却を優先するなら不動産会社・買取業者による買取

不動産会社や買取業者に直接買い取ってもらう方法です。買い手を一から探す必要がないため、条件が整えば仲介より短期間で売却できる可能性があります。

一方で、一般的には仲介より売却価格が低くなりやすい点には注意が必要です。任意売却の場合、提示された買取価格について債権者の同意も必要になります。

(2)資産を身内に残したいなら親族間売買

親や子、きょうだいなどに自宅を購入してもらう方法です。条件によっては、売却後も自宅に住み続けられる可能性があります。

ただし、金融機関によっては親族間売買への融資に慎重な場合があります。売買価格によっては税務上の問題が生じることもあるため、事前の確認が欠かせません。

(3)家に住み続けたい場合はリースバック

リースバックは、自宅を売却した後、買主と賃貸借契約を結んで家賃を支払いながら住み続ける方法です。引越しを避けられる可能性がある一方、売却価格や家賃、賃貸借契約の期間・更新条件などの確認が必要です。

そのため、売却後も無理なく家賃を支払えるかまで含めて検討しましょう。

任意売却後も住み続けることは可能?リースバック・親族間売買を徹底解説

まとめ|買い手がつかないときは「残された時間」と「売れない原因」を確認しよう

任意売却で買い手がつかない場合は、まず競売までにどれだけ時間が残されているのかを確認することから始めましょう。

そのうえで、「問い合わせ」「内覧」「購入申込み」「債権者との調整」のどこで止まっているのかを整理すれば、価格・広告・物件状態・売却条件など、見直すべきポイントを絞り込めます。

現在の不動産会社から具体的な説明や改善策が示されない場合は、別会社からセカンドオピニオンを受けることも一つの選択肢です。競売が進むほど、取れる対応は限られていきます。買い手がつかない原因と残された時間の両方を確認し、早めに次の対応を決めることが重要です。