個人再生とは、裁判所を通じて借金を一定額まで減額し、原則3年間で分割返済していく債務整理の方法です。自己破産とは異なり、原則として財産を処分する手続きではなく、一定の条件を満たして住宅ローン特則を利用すれば、自宅を残しながらほかの借金を整理できる可能性もあります。

ただし、個人再生では、必要書類の準備や裁判所への申立て、再生計画案の提出など、複数の手続きを正確に進めなければなりません。

本記事では、個人再生の手続きの流れを7つのステップに分けて解説します。利用条件や期間・費用の目安、必要書類、自宅を残したい場合の注意点についても確認していきましょう。

個人再生そのものの仕組みや、自己破産との違いから確認したい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

個人再生と自己破産の違い|自宅は守れる?費用・期間・条件を比較して判断

1. 個人再生の手続きの流れ

個人再生の手続きは、弁護士への相談から返済開始まで、大きく7つの段階に分けられます。それぞれの段階でやるべきことや、裁判所とのやり取りのポイントを押さえておくと、手続き全体の見通しが立てやすくなります。

  1. 弁護士へ相談・依頼する

  2. 受任通知を送付して債権額を調査する

  3. 必要書類を準備して申立書を作成する

  4. 裁判所へ個人再生を申し立てる

  5. 個人再生手続の開始決定を受ける

  6. 再生計画案を提出し、債権者の決議・意見聴取を受ける

  7. 再生計画の認可後に返済を開始する

ここでは各ステップの内容を順番に見ていきましょう。

(1)弁護士へ相談・依頼する

まずは弁護士に借金の総額や収入、預貯金・不動産などの財産、住宅ローンの有無を伝え、個人再生が自身の状況に適した方法か確認します。

自宅を残したい場合には、住宅資金特別条項(住宅ローン特則)を利用できるかどうかも、この段階で確認しておくことが重要です。自宅や住宅ローンの状況によっては利用できない場合があります。

収入や借金の状況によっては、任意整理や自己破産など、別の債務整理方法を提案されることもあります。

(2)受任通知を送付して債権額を調査する

弁護士へ依頼すると、貸金業者やクレジットカード会社などの債権者へ受任通知が送付されます。貸金業者などが受任通知を受け取った後は、原則として本人への直接の取立てが止まります。

その後、各債権者から取引履歴や債権額に関する資料を取り寄せ、現在の借金額を調査します。正確な債権額を把握することは、個人再生でどの程度の金額を返済する必要があるかを確認し、再生計画案を作成するためにも重要です。

(3)必要書類を準備して申立書を作成する

個人再生の申立てには、収入や家計、財産、借金などに関するさまざまな書類が必要です。給与明細や源泉徴収票、預金通帳、保険、不動産、自動車などに関する資料を準備し、それらをもとに申立書や債権者一覧表、財産目録、家計全体の状況などを作成します。

住宅ローン特則を利用する場合には、住宅ローンや自宅に関する資料も必要です。必要書類については、後ほど詳しく紹介します。

(4)裁判所へ個人再生を申し立てる

必要書類がそろったら、原則として申立人の住所地を管轄する地方裁判所へ個人再生を申し立てます。申立て後、書類の不足や記載内容に不明点がある場合には、裁判所から追加資料の提出や補正を求められることがあります。

また、裁判所や個別のケースによっては「個人再生委員」が選任され、申立人との面談や、財産・収入、家計の状況などの確認が行われます。

(5)個人再生手続の開始決定を受ける

裁判所が申立内容を確認し、個人再生の要件を満たしていると判断すると、再生手続の開始決定が出されます。開始決定後は、債権者による債権届出などを通じて、個人再生の対象となる債権額を確認していきます。

債権者一覧表に記載した内容と債権者側の主張に違いがないかなどを確認し、最終的な債権額を整理したうえで、次の再生計画案の作成へ進みます。

(6)再生計画案を提出し、債権者の決議・意見聴取を受ける

確定した債権額や財産額などをもとに、減額後の借金をどのように返済していくかを定めた再生計画案を作成し、裁判所へ提出します。

小規模個人再生では、再生計画案について債権者による書面決議が行われます。一方、給与所得者等再生では債権者による決議は行われず、意見聴取が行われます。

再生計画案には裁判所が定める提出期限があります。期限までに提出できないと手続きが廃止される可能性があるため、余裕をもって準備することが重要です。

(7)再生計画の認可後に返済を開始する

裁判所が再生計画を認可し、認可決定が確定したら、計画に従って返済を開始します。

返済期間は原則3年間ですが、特別な事情がある場合には最長5年間となる場合があります。計画どおりに返済を終えることで、養育費など法律上免除されない一部の債務を除き、原則として再生計画によって減額された残りの対象債務について免除を受けられます。

住宅ローン特則を利用している場合には、減額されたほかの借金とは別枠で、住宅ローンについても返済を続ける必要があります。

2. 個人再生の利用条件と手続きにかかる期間・費用

個人再生は、借金がある人なら誰でも利用できるわけではありません。一定の条件を満たす必要があるほか、申立てから認可までには数か月以上かかります。

ここでは、必要になる費用とあわせて確認しておきましょう。

(1)個人再生を利用できる条件

個人再生を利用するための基本的な条件は、住宅ローンなどを除く借金の総額が5,000万円以下で、将来にわたって継続的または反復的に収入を得られる見込みがあることです。また、現状のままでは借金の返済が困難になるおそれがあることも前提となります。

個人再生には「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」があり、給与所得者等再生では、給与など定期的で変動の幅が小さい収入が見込まれることなど、さらに条件があります。

なお、小規模個人再生では、再生計画案について債権者による書面決議が行われます。不同意を回答した議決権者が総数の半数以上となる場合、または不同意の議決権額が総額の2分の1を超える場合には、再生計画案は可決されたものとみなされず、手続きが廃止されることがあります。

(2)個人再生の手続きにかかる期間の目安

個人再生では、裁判所へ申し立てる前に、債権額の調査や必要書類の収集、申立書の作成などを行います。申立て後も、開始決定、債権額の確認、再生計画案の提出、認可と複数の手続きがあります。

そのため、弁護士への相談・依頼から再生計画の認可までは、半年~1年程度かかることが一般的です。

ただし、必要書類を準備する速度や債権者数、裁判所の運用、個別の事情によって所要期間は異なるため、半年~1年はあくまで目安として考えておきましょう。

(3)個人再生の手続きにかかる費用の目安

個人再生では、裁判所へ納める費用と、弁護士へ依頼した場合の弁護士費用が必要です。主な費用の目安は次のとおりです。

項目

費用の目安

申立手数料

東京地方裁判所では1万円

官報公告費用

東京地方裁判所では1万5,120円

郵便料

数千円(裁判所や債権者数などによって異なる)

個人再生委員に関する費用

15万円~25万円(選任の有無や裁判所の運用によって異なる)

弁護士費用

一般的に50万~60万円程度

裁判所へ支払う費用は、申立先や手続きの内容によって異なります。また、個人再生委員が選任される場合には、その報酬に充てる費用などが必要になることがあります。

弁護士費用も法律事務所によって異なり、住宅ローン特則を利用する場合には追加費用が設定されていることもあります。依頼する際は、費用の総額や内訳を確認しておきましょう。

3. 個人再生の手続きで必要になる主な書類

個人再生の申立てでは、収入や財産、借金、家計などを確認するために、多くの書類を提出します。代表的なものは次のとおりです。

分類

主な書類

本人に関する書類

住民票など

収入に関する書類

給与明細、源泉徴収票、課税証明書、確定申告書など

預貯金に関する書類

預金通帳、取引履歴など

財産に関する書類

保険関係資料、不動産関係資料、自動車関係資料など

借金に関する書類

債権者一覧表、借入残高がわかる資料など

家計に関する書類

家計全体の状況など

住宅ローン特則に関する書類

住宅ローンの契約書や返済予定表、不動産関係資料など

実際に必要となる書類や対象期間は、申立先の裁判所や本人の収入・財産状況によって異なります。弁護士に手続きを依頼する場合には、案内された書類を確認して漏れなく準備しましょう。

4. 個人再生の手続きをスムーズに進めるための注意点

個人再生では、多くの資料を正確に提出し、裁判所が定めた期限を守りながら手続きを進める必要があります。申立て後の手続きを滞らせないためにも、次の4つのポイントを意識しましょう。

  • 必要書類を早めに準備する
  • 財産や借金を正確に申告する
  • 再生計画案などの提出期限を守る
  • 履行テストや積立てを確実に行う

(1)必要書類を早めに準備する

個人再生では多くの資料を提出するため、弁護士から必要書類の案内を受けたら早めに準備を始めましょう。

給与明細や預金通帳など比較的準備しやすいものがある一方、退職金の見込額がわかる資料や保険の解約返戻金に関する資料、不動産関係の書類などは、勤務先や金融機関などへの確認が必要になる場合があります。

書類の不足によって申立てが遅れないよう、手元にないものから優先して取得しておくとスムーズです。

(2)財産や借金を正確に申告する

個人再生では、預貯金、不動産、自動車、保険の解約返戻金など、保有している財産を正確に申告する必要があります。借金についても、一部を除外するのではなく、原則としてすべて申告します。

また、個人再生では保有する財産の価値である「清算価値」が最低返済額に影響する場合があります。

財産を意図的に隠したり、一部の債権者を申告しなかったりすると手続きに影響する可能性があるため、弁護士へ正確な情報を伝えることが重要です。

(3)再生計画案などの提出期限を守る

個人再生では、再生計画案をはじめ、裁判所から指定された書類をそれぞれの期限までに提出する必要があります。

特に再生計画案は、期限までに提出できなければ個人再生手続が廃止される可能性があるため注意が必要です。

弁護士へ依頼している場合でも、本人が準備しなければならない資料があります。弁護士からの連絡を放置せず、裁判所の期限から逆算して早めに対応することが、手続きをスムーズに進めるポイントです。

(4)履行テストや積立てを確実に行う

裁判所によっては、再生計画に基づく返済を継続できるか確認するため、一定期間、毎月決められた金額を積み立てる「履行テスト」などが行われます。決められた積立てを継続できなければ、再生計画どおりに返済する能力があるのか疑問を持たれ、手続きに影響する可能性があります。

履行テストや積立てを求められた場合には、指定された金額や振込期限を確認し、毎回確実に対応しましょう。

5. 個人再生をしても自宅を残せない場合は任意売却も検討しよう

個人再生では、住宅ローン特則を利用することで、自宅を残しながらほかの借金を整理できる可能性があります。

ただし、住宅ローン特則には利用条件があり、利用できても住宅ローン自体がほかの借金と同じように減額・免除されるわけではありません。自宅を維持することが現実的でない場合には、任意売却も選択肢となります。

(1)住宅ローン特則を利用できないケースがある

住宅ローン特則を利用するためには、住宅や住宅ローンについて一定の条件を満たす必要があります。

たとえば、自宅に住宅ローンを担保するための抵当権以外の抵当権などが設定されている場合には、原則として住宅ローン特則を利用できません。

そのほかにも条件があるため、「住宅ローンがある自宅なら必ず残せる」というわけではありません。個人再生によって自宅を維持したい場合には、登記事項証明書や住宅ローンの資料を準備し、利用できるか弁護士へ確認しましょう。

(2)住宅ローンの返済を続けることが難しい場合もある

住宅ローン特則を利用しても、住宅ローンそのものがほかの借金のように減額・免除されるわけではありません。住宅ローンは別枠として扱われ、住宅資金特別条項に従って返済を続ける必要があります。

滞納している場合には、滞納分や支払いが遅れたことによる遅延損害金も支払いの対象となります。住宅資金特別条項の内容によって返済期限などを調整できる場合はありますが、住宅ローンの負担自体がなくなる制度ではありません。

個人再生後の返済と住宅ローンを合わせても無理なく生活できるか、長期的な家計を考えて判断することが大切です。

(3)競売になる前に任意売却を検討する

住宅ローンの返済を続けることが難しく、個人再生をしても自宅を維持するのが現実的でない場合には、競売になる前に任意売却を検討する方法があります。任意売却とは、住宅ローンが残っており、通常の売却ではローンを完済できない不動産について、金融機関などの債権者から同意を得たうえで売却する方法です。

競売とは異なり、一般の不動産市場で買主を探せるため、市場価格に近い価格で売却できる可能性があります。競売より高く売却できれば、その分住宅ローンの返済に充てられる金額が増え、売却後に残る債務を抑えられる可能性もあります。

ただし、任意売却を行うには債権者との調整が必要であり、いつでも自由に選択できるわけではありません。住宅ローンの滞納が続き、競売手続きが進むほど売却に使える時間は限られていきます。そのため、住宅ローン特則を利用しても返済の継続が難しいと考えられる場合には、競売が迫ってからではなく、できるだけ早い段階で任意売却に詳しい専門家へ相談することが大切です。

「自宅を残せるか」だけで判断するのではなく、売却後に住宅ローンがどの程度残るのか、その後の返済や住まいをどうするのかまで含め、無理なく生活を立て直せる方法を検討しましょう。

任意売却の概要や、メリット・デメリットについては、こちらの記事で詳しく解説しています。

任意売却とは?競売との違い・流れ・デメリットまでわかりやすく解説

まとめ|住宅ローンの返済に困ったら早めに専門家に相談しよう

個人再生では、弁護士への相談や債権額の調査、必要書類の準備、裁判所への申立て、再生計画案の提出など、複数の手続きを順番に進める必要があります。

住宅ローン特則を利用すれば自宅を残せる可能性がある一方、条件によっては利用できない場合があります。また、利用できても住宅ローンの返済負担自体がなくなるわけではありません。

住宅ローンの返済が厳しい場合は、個人再生だけでなく任意売却なども含めて検討することが大切です。滞納が長期化して競売手続きが進む前に、弁護士や任意売却に詳しい専門家へ早めに相談し、自分の状況に合った生活再建の方法を検討しましょう。