競売では、申立手数料や予納金などさまざまな費用が発生します。これらは一旦債権者が負担するものの、最終的には債務者の負担につながるケースが一般的です。また、競売後も住宅ローンの残債や引っ越し費用など、新たな負担が生じることもあります。

本記事では、競売にかかる費用の内訳や実際の負担者、競売によって生じるリスクを解説するとともに、競売を回避する方法や任意売却という選択肢についてもわかりやすく紹介します。

1. 競売費用は誰が払う?

競売費用は、申立時には債権者が裁判所へ納めます。ただし、競売後は売却代金から手続費用が差し引かれるため、結果的に債務者の負担になるのが一般的です。

具体的には、不動産が売却されると、その売却代金からまず競売手続きにかかった費用が優先的に回収されます。その後、残った金額が住宅ローンの返済に充てられる仕組みです。

形式上は債権者が支払っていても、債務者の資産から費用が差し引かれる点は変わりません。そのため、「債権者が支払うのであれば自分には関係ない」と思わず、競売費用も自身の負担として認識しておくことが大切です。

2. 競売にかかる費用

競売にはさまざまな手続き費用が発生します。申立時には債権者が裁判所へ納めますが、最終的には売却代金から優先的に回収されるため、実質的には債務者の負担につながるケースが少なくありません。

まずは、代表的な費用の内訳を確認しておきましょう。

  • 申立手数料|4000円
  • 予納金|80万円~200万円
  • 登録免許税|債権額の0.4%
  • その他の手数料|2000円~3000円

(1)申立手数料|4000円

申立手数料とは、競売を申し立てる際に裁判所へ納める収入印紙代のことです。競売の種類によって基準が異なり、担保不動産競売では担保権1個につき4,000円、強制競売では請求債権1個につき4,000円が必要となります。

例えば、住宅ローンの担保権が1個の場合は4,000円ですが、土地と建物にそれぞれ別々の担保権が設定されている場合などは2個分となり、8,000円になります。金額自体は大きくありませんが、競売手続きに必要な基本的な費用の一つです。

(2)予納金|80万円~200万円

予納金は、競売手続きに必要な郵便費用や評価人報酬、執行官の事務費用などに充てるため、債権者が事前に裁判所へ納める費用です。不動産の状況や債権者数などによって金額は異なります。

例えば東京地方裁判所では、請求債権額に応じて次のような基準が設けられています。

請求債権額 予納金の額

2000万円未満

80万円

(ただし、令和2年3月31日以前に受理された申立てについては60万円)

2000万円以上5000万円未満

100万円

5000万円以上1億円未満

150万円

1億円以上

200万円

このように、予納金の額は比較的高額であるため、競売を申し立てる債権者にとって、そして、最終的には債務者にとって、大きな負担となります。

(3)登録免許税|債権額の0.4%

登録免許税は、競売開始決定の登記を行う際に必要となる税金です。

請求する債権額を基準として計算され、税率は0.4%です。例えば、債権額が2,000万円の場合、登録免許税は8万円となります。

(4)その他の手数料|2000円~3000円

競売申立てにあたっては、申立手数料や予納金以外にも細かな実費が発生します。代表的なものとして、登記事項証明書の取得費用や郵便切手代などが挙げられます。

3. 競売手続きに関連して追加で発生する可能性がある費用

競売では、裁判所へ納める手続き費用以外にも注意すべき負担があります。状況によっては、これらの費用も債務者へ請求される可能性もあるため、あらかじめ把握しておくことが大切です。

  • 遅延損害金
  • 残置物撤去費用
  • 強制執行費用

(1)遅延損害金

住宅ローンを滞納すると、通常の利息とは別に遅延損害金が発生します。返済期日の翌日以降、所定の利率に基づいて日々加算されていく仕組みです。

競売が完了するまでには1年から1年半程度かかることもあり、その間も遅延損害金は増え続けます。対応が遅れるほど負担が大きくなるため、早めの対策が重要です。

(2)残置物撤去費用

競売によって不動産が落札された後も、室内に家具や家電などの家財が残されている場合には、それらを撤去・処分するための費用が発生します。

本来、残置物は所有者自身で整理・搬出して退去することが求められます。しかし、自主的な片付けが行われない場合には、落札者側が撤去や処分を行い、その費用について損害賠償として請求される可能性があります。

家財の量によっては負担額が大きくなることもあるため、退去時には計画的に整理を進めておくことが大切です。

(3)強制執行費用

競売後も退去に応じない場合には、落札者からの申立てにより、引渡命令を経て強制執行が行われることがあります。

強制執行では、執行官の手数料に加え、作業員の人件費や荷物の搬出・保管・運搬費など、さまざまな費用が発生します。これらの費用もケースによっては債務者側の負担となる可能性があります。

自主的に退去すれば避けられる負担であるため、競売後は新たな所有者との引渡し時期を確認し、早めに対応することが重要です。

4. 競売になると費用以外にもこんな負担がある

競売による影響は、手続きにかかる費用だけではありません。自宅を失うことによる生活環境の変化や、その後の家計への影響など、さまざまな負担が生じる可能性があります。特に、競売は自分の意思で売却条件を決めにくいため、精神的な負担も大きくなりがちです。

ここでは、費用面以外で知っておきたい主なデメリットを紹介します。

  • 市場価格よりも安く売却されやすい
  • 残債が多く残る可能性がある
  • 引っ越し費用が必要となる
  • 競売情報が公開される

(1)市場価格よりも安く売却されやすい

競売では、売却価格や売却時期、買主の選定などを自分で決めることができません。一般の不動産売却と比べて購入希望者が限られることもあり、市場価格より低い価格で落札される傾向があります。

そのため、「少し待てばより高く売れたかもしれない」「この条件なら売りたくなかった」と感じても、競売が進行すると債務者の意思を反映させることは難しくなります。資産を自らの判断で処分できない点は、競売の大きな負担の一つといえるでしょう。

(2)残債が多く残る可能性がある

競売によって自宅を失ったとしても、住宅ローンの返済義務がなくなるとは限りません。売却代金が住宅ローン残高を下回った場合には、残った借金について引き続き返済していく必要があります。

そのため、実際には「住まいを失ったうえに返済も続く」という状況に直面するケースが一般的です。残債の返済は新生活の家計を圧迫する可能性もあるため、競売後の生活再建を見据えて早めに対応策を検討することが重要です。

(3)引っ越し費用が必要となる

競売によって所有権を失った後は、新たな所有者へ物件を引き渡すために退去しなければなりません。新居への引っ越し費用や賃貸契約の初期費用などは、原則として自己負担となります。

引っ越し費用は、敷金・礼金、仲介手数料、荷物の運搬費などを含めると、想像以上にまとまった資金が必要になることもあります。競売が現実味を帯びてきた段階で、住み替え先や必要資金についても早めに検討しておくことが大切です。

(4)競売情報が公開される

競売物件の情報は、裁判所の公告や不動産情報サイトなどを通じて公開されます。一般的には、物件の所在地や間取り、外観写真などが掲載されるため、近隣住民や知人に事情を知られる可能性があります。

もちろん、競売情報が公開されたからといって、近隣住民や知人など周囲の人に事情が必ず知られてしまうわけではありません。しかし、「誰かに気づかれるのではないか」と不安を感じたり、プライバシーへの懸念から精神的なストレスを抱えたりする方もいます。このような心理的負担が生じる可能性がある点も、競売のデメリットの一つといえるでしょう。

5. 競売を回避する方法・取り下げてもらう方法はある?

競売開始決定後であっても、状況によっては競売を回避できる可能性があります。主な方法を確認しておきましょう。

  • 債務(住宅ローン)を一括返済する
  • 個人再生をする
  • 任意売却する

(1)債務(住宅ローン)を一括返済する

住宅ローンを完済できれば、競売の原因そのものが解消されます。

自己資金のほか、親族からの援助や不動産の任意売却などによって返済資金を確保できれば、債権者に競売の取下げを求められる可能性があります。

(2)個人再生をする

個人再生とは、裁判所を通じて借金を大幅に減額し、原則3~5年かけて返済していく債務整理の手続きです。一定の要件を満たして住宅ローン特則(住宅資金特別条項)を利用できれば、住宅ローンはこれまでどおり返済を続けながら、その他の借金だけを整理できる場合があります。

ただし、住宅ローン特則の利用には細かな条件があるため、早めに弁護士や司法書士などの専門家へ相談することが大切です。個人再生に関する詳しい情報は、こちらの記事で詳しく解説しています。

個人再生と自己破産の違い|自宅は守れる?費用・期間・条件を比較して判断

(3)任意売却する

任意売却とは、住宅ローンの返済が難しくなった際に、債権者(金融機関など)の同意を得たうえで不動産を売却する方法です。競売とは異なり、一般の不動産市場で買主を探して売却を進めます。

競売開始決定後であっても、開札前であれば任意売却によって競売の取下げにつながるケースがあります。ただし、競売手続きが進むほど調整できる期間は短くなるため、任意売却を検討する場合はできるだけ早く専門家へ相談することが大切です。

任意売却が間に合うタイミングや条件については、こちらの記事で詳しく解説しています。

競売の取り下げは開札後でも可能?期限・費用・手続きの流れを徹底解説

6. 任意売却なら自己負担なく進められるケースもある

任意売却では、仲介手数料や抵当権抹消費用などの諸費用を売却代金から精算するのが一般的です。そのため、債務者がまとまった現金を用意しなくても手続きを進められるケースがあります。

また、一般の不動産市場で売却するため、競売よりも高値で売却できれば残債の圧縮につながる可能性があります。債権者との交渉次第では、売却代金の一部を引っ越し費用として認めてもらえる場合もあり、退去時期の調整もしやすい点は任意売却ならではの特徴です。

もっとも、任意売却には債権者の同意が必要であり、状況によっては利用できないこともあります。住宅ローンの滞納が長引くほど選択肢は限られるため、早めに専門家へ相談することが大切です。

任意売却に必要な費用の一覧や相場、自己負担の有無については、こちらの記事もご覧ください。

任意売却の費用はいくらかかる?内訳・相場・自己負担の有無をわかりやすく解説

まとめ|競売を回避するためには早めに専門家に相談しよう

競売では、申立手数料や予納金といった手続き費用だけでなく、遅延損害金や残債、引っ越し費用などさまざまな負担が発生する可能性があります。また、市場価格より低く売却されやすいことから、生活再建に影響を及ぼすケースも少なくありません。

一方で、競売開始決定後であっても、個人再生や任意売却など状況に応じた対処ができる場合があります。「もう手遅れかもしれない」と諦めず、少しでも不安を感じた段階で専門家へ相談することが大切です。早めの行動が、将来の選択肢を広げることにつながります。