住宅ローンの返済が困難になった際の選択肢として任意売却があります。「実際にどれくらいの費用がかかるのか」「手元にお金がなくても手続きできるのか」といった不安を抱える方も多いのではないでしょうか。
本記事では、任意売却で発生する費用の種類や相場、自己負担の有無について、具体例を挙げてわかりやすく解説します。
1. 任意売却の費用は誰が負担する?自己資金ゼロでもできるのか

任意売却に伴う仲介手数料や登記費用、印紙税などの諸費用は、原則として売主負担ではあるものの、決済時に売却代金の中から差し引いて精算されるのが一般的です。そのため、相談や販売活動の段階で費用を請求されることは通常ありません。
任意売却した物件の売却代金はまず金融機関への返済に充てられ、その後、管理費や税金の滞納分、仲介手数料などが配分されます。売却価格や滞納状況によっては、例外的に一部自己負担が生じる可能性もありますが、多くの場合は自己資金ゼロで任意売却を進めることが可能です。
どこまで費用を売却代金で賄えるかは状況によって異なるため、早い段階で不動産会社に相談し、事前に収支のシミュレーションを行ってもらうことが重要です。
2. 任意売却で発生する主な費用の種類

任意売却にかかる費用は一般的に売却代金から差し引かれるため、あらかじめ費用を用意する必要はありません。しかし、費用がかさんで売却代金が低くなってしまうと、その分ローン残高が多く残ることになります。
そのため任意売却を検討する際には、任意売却に際してどのような費用が発生するのか、費用構造を把握しておくことが重要です。正しく諸費用について理解しておくことで、業者に騙されるなどの万が一のケースも回避することができます。ここでは、任意売却にかかる下記の費用について詳しく解説します。
- 仲介手数料(不動産会社への報酬)
- 登記関連費用(抵当権抹消・司法書士報酬など)
- 契約書にかかる印紙税
- 管理費・修繕積立金・固定資産税などの滞納分
- 引越し費用・残置物撤去費用など、実際の転居に伴うコスト
(1)仲介手数料(不動産会社への報酬)
仲介手数料は、任意売却の窓口となる不動産会社に支払う報酬のことです。一般的に成功報酬型となっており、売却代金の中から差し引かれるため、手続きの途中段階で現金を用意する必要はありません。
なお、仲介手数料は法律により上限額が定められており、一般的にはその上限額がそのまま請求額となります。計算式と具体的な計算例は以下の通りです。
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(計算式)※売買代金が400万円以上の場合 仲介手数料の上限額 = (売買価格 × 3% + 6万円) + 消費税 |
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(計算例) 売買価格が2,000万円の場合、 仲介手数料の上限額 = (2,000万円 × 3% + 6万円) + 消費税 = 66万円 + 消費税 = 72万6千円 |
2024年7月の法改正により、空き家流通を促進する目的から「低廉な空家等の媒介特例」が拡充され、売買価格800万円以下の空き家・空き地については、仲介手数料の上限が30万円+消費税(計33万円)に引き上げられました。従来は売主のみが対象でしたが、改正後は買主からも同額を受領可能となっています。ただし、適用には物件要件など一定の条件があります。
(2)登記関連費用(抵当権抹消・司法書士報酬など)
任意売却に際しては、抵当権を抹消するための抵当権抹消登記と、買主に所有権を移転する所有権移転登記が必要となり、それぞれ登録免許税の支払い義務が生じます。
また、登記手続きは通常、司法書士に依頼するため、司法書士への報酬も発生します。具体的な金額は物件の状況や価格等によって異なりますが、数万円から十数万円程度となることが一般的です。これらの費用も、基本的には決済時に売却代金から支払われる仕組みとなっています。
(3) 契約書にかかる印紙税
不動産の売買契約書には、契約金額に応じた収入印紙を貼付する必要があります。印紙税も決済時にまとめて精算されるのが一般的です。
なお、近年普及している電子契約の方式を採用した場合には、印紙税は課税されません。
(4)管理費・修繕積立金・固定資産税などの滞納分
マンションの管理費や修繕積立金のほか、固定資産税・都市計画税などの滞納がある場合には、これらの滞納分が売却代金のなかから優先的に清算されます。
ただし、どこまでの範囲を売却代金で賄えるかは、債権者である金融機関や管理組合、自治体との調整次第となります。事前に滞納状況を正確に把握し、不動産会社や専門家に伝えておくことが重要です。
(5)引越し費用・残置物撤去費用など、実際の転居に伴うコスト
任意売却に付随する費用として、転居にかかる費用も挙げられます。新居の賃貸借契約における敷金・礼金や引っ越し業者に支払う費用、家具家電の処分費用など、転居には相当のコストがかかります。
これらの費用は、原則として自己負担となりますが、ケースによっては、債権者との交渉により売却代金に含められることもあります。
3. 滞納税金・管理費・差押えがある場合の費用と取り扱い

住宅ローン以外に税金や管理費の滞納がある場合でも、任意売却の中で整理を図ることは可能です。ただし、それぞれの債権者との調整が必要となります。
固定資産税や住民税などの税金を滞納している場合、差押えの有無や優先順位によって精算方法が変わります。税金債権は法律上の優先順位が高いため、任意売却を依頼する不動産会社には滞納状況を正確に伝えることが重要です。市区町村との協議により、売却代金からの一部納付や残額の分割納付が認められるケースもあります。
マンションの場合、管理費・修繕積立金の滞納分は売却代金の中から清算する形で合意を図るのが一般的です。管理組合からの請求額を事前に確認し、債権者との配分協議に反映させる必要があります。
差押え登記が設定されている場合、原則としてそのままでは所有権移転ができません。差押え権者の同意を得て配分条件を調整する必要があるため、任意売却の実績が豊富な不動産会社に依頼することが望ましいでしょう。
4. 任意売却の費用で「損をしない」「騙されない」ためのチェックポイント

任意売却は専門性が高いため、費用の仕組みを十分に理解しないまま進めると、不必要な支出や不透明な請求に気付きにくくなる点に注意が必要です。任意売却であっても、できるだけ高く売却できればローン残債を減らせるため、売却額から差し引かれる諸費用の内容を把握しておくことが重要です。
そのため、以下のポイントを意識的に確認するようにしましょう。
- 手数料・報酬の内訳が明細に書面で説明されているかの確認
- 「ゼロ円」「どこよりも高く売れる」など極端なセールストークへの注意
- 契約前に必ず確認したい書類(媒介契約書・見積書など)
(1)手数料・報酬の内訳が明細に書面で説明されているかの確認
仲介手数料、司法書士報酬、その他の諸費用について、明細とともに書面で提示されているかを確認しましょう。口頭での説明だけでなく、具体的な金額と計算根拠が記載された書面があることが重要です。
また、担当者がこれらの内容や根拠を丁寧に説明してくれるかどうかも、信頼性を見極めるうえで大切な判断材料となります。仲介手数料とは別に、「任意売却コンサルティング料」「特別成功報酬」などの名目で高額な費用を請求する事例も見られます。名称が異なっていても、実質的に手数料の上乗せになっていないか、慎重に確認することが必要です。
(2)「ゼロ円」「どこよりも高く売れる」など極端なセールストークへの注意
「費用は一切かからない」「必ず相場以上で売れる」といった過度に有利な点だけを強調する説明には注意が必要です。
任意売却では、金融機関との調整や売却期限など、通常の売買にはない制約が伴います。経験や実績が乏しい業者の場合、現実的な見通しを十分に示さないまま契約を進めてしまい、結果として売却が長引いたり、条件が想定より悪くなるリスクもあります。一方、実績豊富な業者であれば、メリットだけでなく、考えられるリスクや制約についても丁寧に説明したうえで、現実的な売却シミュレーションを提示してくれます。
任意売却を成功させるためには、極端なセールストークに惑わされず、状況を踏まえた冷静な説明と具体的な提案をしてくれる業者を選ぶことが重要です。
任意売却はどんな不動産会社に相談すべき?失敗しない業者選びのポイントと注意点
(3)契約前に必ず確認したい書類(媒介契約書・見積書など)
媒介契約書や見積書には、手数料率、費用項目、解約時の取り扱いなどの重要事項が記載されています。契約前に必ず内容を確認し、不明点が残る状態で署名・押印することは避けましょう。
特に確認すべきポイントは、途中で契約を解除する場合の条件や費用負担の有無です。これらを明確にしておくことで、後のトラブルを未然に防ぐことができます。疑問点があれば遠慮せず質問し、納得できる説明を受けてから契約することが大切です。
まとめ
任意売却にかかる費用は、仲介手数料や登記費用、印紙税、滞納している税金・管理費などが主ですが、多くの場合は売却代金から差し引いて精算されるため、手続き開始時に自己資金を用意する必要はほとんどありません。ただし、費用がかさめばローン残高が多く残ってしまう可能性があるため、費用の内訳についてしっかりと把握しておく必要があります。
任意売却で損をしないためには、費用の内訳を必ず書面で確認し、極端なセールストークに惑わされず、実績ある不動産会社に相談することが、安心して手続きを進めるためのポイントです。




