代位弁済とは、住宅ローンなどの返済が滞った際に、保証会社等が債務者に代わって債務を弁済することです。代位弁済がなされると、今度は保証会社等に対して返済をしなければならず、返済が滞ると自宅や給料の差し押さえを受ける可能性があります。
本記事では、代位弁済の基本的な仕組みと第三者弁済・債権譲渡との違い、代位弁済が行われる流れ、通知が届いた後のデメリットとリスク、そして任意売却や債務整理といった具体的な対処法について解説します。
1. 代位弁済とは?

代位弁済とは、住宅ローンなどの返済が滞った際に、保証会社や保証協会などの第三者が債務者に代わって金融機関へ立替払いを行うことを指します。住宅ローンを組む際、多くの場合は保証会社との保証契約が必須となっており、債務者が返済不能になった場合に備えた仕組みとして機能します。
重要なのは、代位弁済が行われても借金そのものが消えるわけではないという点です。金融機関への債務は保証会社によって清算されますが、今度は保証会社に対して返済する義務が発生します。つまり、返済先が金融機関から保証会社へ切り替わるだけで、債務者の返済責任は継続します。保証会社は立替払いをした金額について、債務者に対して求償権を取得し、返済を求めることになります。
2. 代位弁済と第三者弁済・債権譲渡との違いは?

ここでは、代位弁済と第三者弁済・債権譲渡との違いを整理します。
(1)代位弁済と第三者弁済の違い
代位弁済とよく似た言葉に、「第三者弁済」があります。第三者弁済と代位弁済は混同されがちですが、両者は本質的に異なります。
第三者弁済とは、債務者以外の第三者(例えば家族や友人)が、債務者に代わって債務を弁済することをいいます。なお、保証人は債権者との保証契約に基づき、「自らの債務」として保証債務を履行するため、ここにいう「第三者」には該当しません。
これに対し「代位弁済」とは、「弁済による代位」という効果が生じる弁済のことをいいます。弁済による代位とは、第三者弁済や保証人による弁済の結果、一定の要件のもとで、もとの債権が実質的にそのまま弁済者に移転する効果のことです。
すなわち、第三者弁済は「誰が弁済したか」という行為の主体に着目した概念であるのに対し、代位弁済は「弁済の結果として債権が移転するか」という法的効果に着目した概念であるため、同時に起きることもあります。
第三者弁済であっても、常に弁済による代位が生じるわけではなく、代位が認められるのは一定の要件を満たす場合に限られます。
(2)代位弁済と債権譲渡の違い
債権譲渡とは、債権者が保有する債権を他の第三者へ売却または譲渡することで、債権の帰属先が変わる仕組みです。たとえば、金融機関が債権回収の効率化を図るために、債権回収会社へ債権を売却するケースがこれに該当します。債権譲渡では、元の債権がそのまま新しい債権者に移転します。
一方で代位弁済は、保証会社が金融機関に対して立替払いを行ったことをきっかけに、返済先が変わる仕組みです。債権が「売買」されるのではなく、「立替払い」という行為に基づいて求償権が発生し、その結果として返済先が保証会社に移ります。立替払いという事実行為が起点となる点が、債権譲渡との本質的な違いです。
3. 代位弁済の流れ

ここでは、督促から代位弁済の実行、その後の請求までの流れを時系列で確認します。
- 債権者から債務者への督促
- 債権者から保証会社等への督促
- 保証会社による代位弁済
- 保証会社等から債務者への督促
(1)債権者から債務者への督促
住宅ローンの返済が遅れると、まず金融機関から電話や郵送による督促が始まります。初期段階では返済状況の確認や、支払いが遅れている理由についてのヒアリングが中心です。
この時点であれば、一時的な収入減少などの事情を説明することで、返済条件の変更やリスケジュールに応じてもらえる可能性があります。
(2)債権者から保証会社等への督促
一定期間にわたって滞納が続き、債務者との交渉でも返済の見通しが立たない場合、金融機関は保証会社に対して保証履行を請求します。保証履行とは、保証契約に基づいて保証会社が債務者に代わって残債を立替払いすることを意味します。
金融機関から保証会社への請求が行われる時点で、事態はかなり深刻です。通常、滞納開始から3〜6か月程度でこの段階に達することが多く、債務者には「期限の利益喪失予告通知」などの書面が届きます。この通知は、このまま滞納が続けば期限の利益を失い、残債の一括返済を求められることを意味する重要な警告です。
(3)保証会社等による代位弁済
保証会社が金融機関に対して住宅ローンの残債を立替払いすることで、代位弁済が実行されます。この時点で、金融機関側の債権は保証会社によって清算され、金融機関にとっての債権回収は一旦完了します。抵当権などの担保権も、金融機関から保証会社へ移転することが一般的です。
債務者にとっては、返済先が金融機関から保証会社(または保証会社から委託を受けた債権回収会社)に変わることになります。代位弁済が実行されると、債務者宛てに「代位弁済通知書」が送付され、以降の返済方法や連絡先が記載されます。
(4)保証会社等から債務者への督促
代位弁済後、保証会社は立替払いした金額について債務者に返済を求めます。この段階では、原則として残債の一括返済が求められますが、債務者の返済能力を考慮して分割返済の交渉に応じるケースもあります。
保証会社からの連絡を放置すれば、次の段階として法的手続きに移行する可能性が高まります。具体的には、訴訟の提起や支払督促の申立てが行われ、最終的には給与や預金の差押え、不動産の競売といった強制執行に進むことになります。
4. 代位弁済の時効成立は難しい

代位弁済後に保証会社が取得する求償権には、消滅時効が適用されます。民法の規定により、求償権の消滅時効期間は10年とされています。つまり理論上は、10年間にわたって保証会社からの請求や差押えなどの法的措置を受けずに過ごせば、時効によって返済義務が消滅する可能性があります。
しかし、実際には時効の成立は極めて困難です。保証会社や債権回収会社は債権回収の専門組織であり、時効の進行を阻止するための手段を熟知しています。具体的には、督促状の送付、債務承認を求める連絡、訴訟の提起、支払督促の申立てなどによって、時効の完成を中断または更新させます。特に裁判上の請求が行われると時効が更新され、判決確定から再び10年の時効期間がスタートします。
さらに、時効を待つ間も遅延損害金は膨らみ続け、最終的には給与や預金の差押え、不動産の競売といった強制執行が実行される可能性が高くなります。そのため、時効の成立を期待して放置するのではなく、任意売却や債務整理など現実的な解決策を早期に検討することをおすすめします。
5. 代位弁済が行われるデメリット・リスク

ここでは、代位弁済後に直面する具体的なデメリットとリスクを確認します。
- 一括返済を求められる
- 個人信用情報機関に事故情報が登録される
- 遅延損害金により返済総額が増える
- 保証人・連帯保証人も返済を求められる
- 督促を無視すると給与や財産の差押えを受ける
(1)一括返済を求められる
代位弁済が実行されると、保証会社から残債の一括返済を求められるのが原則です。住宅ローンは通常、長期の分割払いを前提としていますが、滞納によって期限の利益を喪失すると、残っている債務をすべて一度に支払う義務が生じます。
数千万円単位の債務を一括で返済できる人はほとんどおらず、現実的には分割返済の交渉や、任意売却、債務整理といった別の解決策を検討する必要があります。一括返済を求められた時点で、早急に専門家へ相談し、実現可能な返済計画を立てることが重要です。
(2)個人信用情報機関に事故情報が登録される
代位弁済が行われると、個人信用情報機関に事故情報として登録されます。いわゆる「ブラックリスト入り」の状態となり、この情報は一定期間にわたって記録され続けます。登録期間は信用情報機関によって異なりますが、一般的には完済から5〜7年程度です。
この期間中は、新たな住宅ローンや自動車ローン、クレジットカードの審査に通ることが極めて難しくなります。携帯電話の分割払いや賃貸住宅の保証会社審査にも影響する可能性があり、生活のさまざまな場面で制約を受けることになります。
(3)遅延損害金により返済総額が増える
住宅ローンを滞納すると、遅延損害金が発生します。遅延損害金は通常の利息よりも高い利率で計算されることが多く、滞納期間が長引くほど総返済額は膨らんでいきます。代位弁済が実行された後も、遅延損害金は引き続き加算されます。
返済を先延ばしにするほど負担が重くなるため、早期に返済計画を立て直すか、任意売却や債務整理によって負担を軽減する方向で検討しましょう。
(4)保証人・連帯保証人も返済を求められる
住宅ローン契約に保証人や連帯保証人が設定されている場合、代位弁済後は保証人も債務者本人と同様に返済を求められます。特に連帯保証人は、債務者と同等の返済義務を負うため、保証会社は債務者と連帯保証人の双方に対して請求を行うことができます。
債務者本人が返済できない場合、保証人の財産が差し押さえられるリスクもあるため、保証人にも早い段階で状況を説明し、一緒に解決策を考えることが必要です。
(5)督促を無視すると給与や財産の差押えを受ける
保証会社からの督促や返済交渉を無視し続けると、法的手続きに移行します。具体的には、訴訟の提起や支払督促の申立てが行われ、裁判所から債務名義を取得した保証会社は、債務者の給与や預金、不動産などの財産を差し押さえることが可能になります。
給与の差押えは勤務先にも通知されるため、職場に債務問題が知られることになります。また、預金口座が差し押さえられれば、生活費の引き出しができなくなり、日常生活に直接的な支障が生じます。
不動産については競売手続きが進められ、市場価格よりも低い金額で売却されるリスクがあります。差押えは生活への影響が極めて大きいため、督促の段階で必ず対応し、専門家に相談して解決策を見出すことが求められます。
6. 代位弁済の通知がきたときの対処法

ここでは、保証会社からの通知を受け取った後に検討すべき3つの主要な対処法を解説します。
- 分割払いに応じてもらえないか交渉する
- 不動産を任意売却する
- 債務整理(個人再生・自己破産)をする
(1)分割払いに応じてもらえないか交渉する
代位弁済後は原則として一括返済を求められますが、保証会社も回収を優先するため、債務者の収入や資産状況を考慮して、分割返済に応じるケースがあります。
まずは保証会社に連絡を取り、現在の家計状況を正直に説明したうえで、返済可能な金額と期間を提案しましょう。
(2)不動産を任意売却する
返済の目途が立たず、自宅を手放す必要がある場合は、競売よりも任意売却を選択することで有利な条件を引き出せる可能性があります。任意売却とは、保証会社など債権者の同意を得たうえで、通常の不動産売却に近い形で物件を売る方法です。
競売では市場価格の5~7割程度での落札となることが多いのに対し、任意売却では市場価格に近い金額での売却が期待できます。売却額が高ければ、残債の圧縮につながり、債務整理後の負担も軽減されます。また、任意売却では、引越し時期の調整や引越し費用の一部負担を交渉できるケースもあり、生活再建の準備がしやすくなります。
任意売却についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
任意売却とは?競売との違い・流れ・デメリットまでわかりやすく解説
(3)債務整理(個人再生・自己破産)をする
分割返済も任意売却も難しい場合には、法的な債務整理を検討します。債務整理には主に個人再生と自己破産の2つの選択肢があります。
個人再生は、裁判所の認可を受けて債務を大幅に圧縮し、原則3年間で分割返済する手続きです。住宅ローン特則を利用できれば、自宅を残しながら他の債務を整理できる可能性があります。
自己破産は、裁判所に破産を申し立て、免責が認められればほぼすべての債務の支払い義務が免除される手続きです。ただし、不動産などの財産は原則として処分されます。
7. 代位弁済の通知がきたときの相談先

代位弁済通知を受け取った後、適切な専門家に相談することで、状況に応じた最善の解決策を見出すことができます。ここでは、相談先ごとの特徴を解説します。
(1)任意売却|任意売却に強い不動産会社
任意売却を検討する場合は、任意売却の実績が豊富な不動産会社に相談することが重要です。任意売却では、保証会社など債権者との交渉と並行して物件の売却活動を進める必要があり、両方のノウハウを持つ会社でなければ円滑に進められません。
特に代位弁済後は時間的な余裕が少なくなっているため、債権者との交渉経験が豊富で、迅速に売却活動を展開できる会社を選ぶことが結果を左右します。競売開始決定が出される前に任意売却を成立させるためには、段取り力とスピードが不可欠です。
初回相談は無料で対応している会社も多いため、複数の会社に相談して、信頼できる担当者を見つけることをおすすめします。早めに動き出すほど、有利な条件で売却できる可能性が高まります。
任意売却に強い不動産会社を選ぶための判断基準や悪徳業者に騙されないためのポイントについてはこちらの記事で解説しています。
任意売却はどんな不動産会社に相談すべき?失敗しない業者選びのポイントと注意点
(2)債務整理|弁護士・司法書士・法テラス
個人再生や自己破産といった債務整理は、裁判所を通じた法的手続きであり、高度な専門知識と経験が求められるため、弁護士や司法書士などの専門家に相談しましょう。
費用面で不安がある場合は、法テラス(日本司法支援センター)の利用を検討しましょう。法テラスでは、資力基準を満たせば無料相談や費用の立替制度を利用できます。
まとめ|代位弁済は早期対応と専門家への相談が重要
代位弁済とは、住宅ローンの返済が滞った場合に、保証会社が債務者に代わって金融機関へ立替払いを行う仕組みです。代位弁済後も借金がなくなるわけではなく、返済先が保証会社に変わり、一括請求や差押え、競売といったリスクが高まります。通知を放置すると状況は急速に悪化するため、早期の対応が重要です。
分割返済の交渉、任意売却、個人再生や自己破産などの債務整理を含め、自身の状況に合った対処法を検討し、早めに専門家へ相談することが、生活再建への第一歩となります。




