住宅ローンの滞納が続き、裁判所から競売開始決定通知や期間入札通知が届いた場合、「もう家を手放すしかないのか」と不安になる方も多いでしょう。しかし、競売は開札日の前日まで取り下げられる可能性があり、適切な対処をすれば止められるケースも少なくありません。

本記事では、競売を止めるための4つの方法と、タイミング別の具体的な対処法、相談すべき専門家について解説します。

1. 競売を止められるかどうかは「手続きの段階」で決まる

競売とは、債権者が裁判所に申し立てて、債務者の不動産を強制的に売却し、その代金から債権を回収する手続きです。競売手続きは段階的に進行し、どの段階にあるかによって取りうる対処法が変わってきます。特に開札日が近づくほど、現実的な選択肢は限られていきます。

ここでは、競売を止めるために知っておくべき重要なポイントを確認しましょう。

(1)競売の取り下げ期限は競売の開札日の前日まで

競売手続きは進行度によって打てる手が変わり、特に開札日が近づくほど現実的な選択肢は絞られます。開札日とは、入札の結果として買受人が決定される日のことを指します。法律上、競売の取り下げは開札日の前日までであれば可能とされているため、この期限がタイムリミットです。

まずは手元に届いた通知書で「開札日」と「入札期間」を確認しましょう。入札期間は通常1週間程度で、その終了後に開札が行われます。開札日から逆算して、自分にどれだけの時間が残されているかを把握することが、適切な対処法を選ぶ第一歩となります。時間が限られている場合は、複数の選択肢を同時並行で検討する必要があります。

(2)競売を取り下げられるのは申立債権者

競売の取下げ手続きができるのは、原則として申立てをした債権者、つまり金融機関や保証会社などです。債務者本人が直接手続きを止めることはできないため、債権者に対して「取下げに足る根拠」を示して交渉する必要があります。

具体的には、任意売却による売却計画や返済の見込みを提示し、債権者にとって競売を続けるよりもメリットがあることを説明します。債権者は回収額を最大化したいという立場ですから、競売よりも高値で売却できる可能性や、確実に返済が見込める再生計画などを示すことが交渉のカギとなります。

2. 競売を止める・回避する4つの方法

ここでは競売を止める4つの方法の特徴について解説します。

  • 任意売却
  • 個人再生
  • 自己破産
  • ローンの全額返済

(1)任意売却

任意売却とは、債権者の同意を得て、競売ではなく通常の不動産売却に近い形で物件を売却する方法です。競売では売却価格が市場価格の5〜7割程度になることが多いのに対し、任意売却では市場価格に近い金額での売却が期待できるため、債権者にとっても回収見込みが高まります。

また、任意売却は引越し時期や条件について一定の調整が可能で、競売のように情報が公に開示されることもありません。できる限り生活への影響を抑えながら、より良い条件で売却を進めたい場合には、競売を待つのではなく、早い段階で任意売却を検討することが重要です。

ただし、手続きには債権者の同意が必要であり、売却活動には一定の時間がかかるため、開札日までに余裕がある段階で着手することが重要です。任意売却に強い不動産会社に早めに相談しましょう

任意売却については、こちらの記事で詳しく解説しています。

任意売却とは?競売との違い・流れ・デメリットまでわかりやすく解説

(2)個人再生

個人再生は、裁判所を通じて借金を大幅に圧縮し、原則3年間で分割返済する手続きです。要件を満たせば住宅ローン特則を利用でき、自宅を手放さずに債務整理ができる可能性があります。個人再生の申立てが受理されると、競売手続きの中止を裁判所に求めることができます。

ただし、継続的な収入があることや、住宅ローン以外の債務額が5000万円以下であることなど、一定の要件を満たす必要があります。また、手続きには数カ月かかるため、開札日までの時間を考慮して早期に弁護士や司法書士に相談することが求められます。

(3)自己破産

自己破産の手続きが開始されると、競売手続きは一時的に中断される場合があります。しかし、破産手続きでは原則として自宅は換価対象となり、最終的には売却されることになります。つまり、自己破産は競売を「止める」というよりも、返済不能な状態を自ら法的に整理して生活再建へ切り替える手段といえます。

自己破産を選択する場合は、家を失うことを前提に、その後の生活設計を考える必要があります。免責が認められれば、住宅ローンを含むほとんどの債務の支払い義務がなくなり、経済的な再スタートを切ることができます。

(4)ローンの全額返済

住宅ローンを全額返済できれば、競売の申立て理由がなくなるため、最も確実に競売を止めることができます。債務を完済すれば抵当権も抹消され、不動産は完全に自分のものとして残ります。

しかし現実には、滞納している状態で一括返済できる資金を調達するのは非常に困難です。親族からの資金援助、不動産の借換え、退職金の前借りなど、あらゆる可能性を検討する必要があります。開札日までの時間が限られている中で資金調達の可否を即座に判断しなければならないため、まずは金融機関や親族と早急に相談し、現実的な選択肢かどうかを見極めることが重要です。

3. タイミング別:競売を止めるためにできること

競売手続きの進行状況によって、取りうる対策は変わります。ここでは、入札前・入札中・開札後の3つの段階に分けて、それぞれのタイミングでできることを解説します。

段階

残された期間の目安

できること

入札前

数週間〜数ヵ月

・債権者との交渉(返済条件変更・猶予)

・任意売却の開始

・個人再生の申立て

入札中〜開札直前

数日〜2週間程度

・任意売却の最終交渉

・個人再生/自己破産の準備・相談

開札後

非常に短期間

・個人再生(住宅を残す可能性を探る)

・自己破産による債務整理

(1)入札前:交渉・任意売却・個人再生

入札開始前の段階は、最も選択肢が多く、競売を止められる可能性も高いタイミングです。この時期であれば、債権者との交渉によるリスケジュール、任意売却への切り替え、個人再生の申立てなど、複数の方法を検討する時間的余裕があります。

任意売却を選択する場合は、不動産会社による査定と売却活動に時間がかかるため、できるだけ早期に着手することが重要です。

(2)入札中~開札直前:同時並行

入札期間が始まってから開札日までの間は、時間が非常に限られた局面です。この段階では「任意売却交渉」と「法的手続きの検討」を並行して進め、間に合う可能性が高いルートに集中する必要があります。

具体的には、任意売却の可能性を探りながら、同時に個人再生や自己破産の相談も進めます。書類収集と専門家への相談を同日に行うなど、複数のタスクを同時進行させる覚悟が必要です。この段階では、一つの方法に固執せず、柔軟に対応することが求められます。

(3)開札後:個人再生・自己破産

開札が終わると買受人が決定し、関係者が増えるため調整がより困難になります。この段階では、競売を「止める」という発想から、法的手続きによって債務を「整理して着地させる」という発想への切り替えが重要になります。

家を残す可能性を最後まで探るのであれば個人再生を検討し、返済が完全に不可能であれば自己破産を軸に進めます。開札後も売却許可決定が確定するまでは一定の猶予がありますが、現実的には法的整理による生活再建を優先すべき段階です。

4. ケース別:競売を止めるために相談すべき相手

競売を止めるために選ぶ方法によって、相談すべき専門家は異なります。ここでは、それぞれの方法に応じた適切な相談先を紹介します。

(1)任意売却:任意売却に強い不動産会社

任意売却を選択する場合は、任意売却の実績が豊富な不動産会社に相談することが重要です。任意売却では「債権者との交渉」と「物件の売却活動」を同時に進める必要があり、両方のノウハウを持つ会社でなければ対応が難しいためです。

特に開札日が近い場合は、債権者との交渉スピードと売却の段取り力が結果を左右します。過去の取扱い実績や債権者との関係性、迅速な対応が可能かどうかを確認したうえで、信頼できる会社を選びましょう。初回相談は無料で対応している会社も多いため、複数の会社に相談して比較検討することをおすすめします。

任意売却に強い不動産会社の選び方や失敗しないためのポイントなどについては、こちらの記事で詳しく解説しています。

任意売却はどんな不動産会社に相談すべき?失敗しない業者選びのポイントと注意点

(2)個人再生・自己破産:弁護士・司法書士

個人再生や自己破産は裁判所を通じた法的手続きであり、専門的な知識と経験が必要となるため、弁護士または司法書士に相談しましょう。

時間がない場合は特に、債務整理の経験が豊富な専門家に早期相談することが重要です。法テラスや自治体の無料相談窓口を活用すれば、費用面での不安がある場合でも相談しやすくなります。

まとめ|競売までに残された期間を正しく把握し、最適な選択をしよう

競売は、開札日の前日までであれば止められる可能性があり、その可否は「今どの段階にあるか」によって大きく左右されます。入札前であれば、任意売却や個人再生など複数の選択肢を検討できますが、時間の経過とともに現実的な対処法は限られていきます。

重要なのは、競売に関する通知が届いた時点で残された期間を正確に把握し、状況に応じた最短ルートを選ぶことです。競売を回避できる可能性を少しでも高めるためにも、早い段階で専門家に相談し、同時並行で対策を進めるようにしましょう。